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★江戸湾最奥部・江戸ベイより★

★江戸の釣り文化★
034.gif遊びの釣りが始まったのは、江戸時代に入ってからである。・・・そう話すと!005.gif
ほとんどの人がびっくりした顔をする。005.gif
釣りは手軽な遊びである。だから、縄文時代から人々は、水辺に糸を垂れ続けてきたと考えられがちなのだが、実は違う。013.gif
その証明は簡単だ。江戸時代になるまで遊興の釣りは、文学にも絵画にも登場しない。平安時代の「枕草子」にも鎌倉時代の「徒然草」にも書かれていない。015.gif
上級貴族の寝殿造りの建物には池に面して釣殿が配されていたが、釣りをするための場所ではなかった。
仏教思想の浸透した日本では殺生禁断の教えが強く、動物性タンパクは、魚鳥に求められた。魚を捕るのは漁師であり、一般人が遊びにするのは罪深い行いであったのだ。022.gif
生類憐みの令は、徳川五代将軍・綱吉によるものが有名だが、平安時代の白河上皇の院政下(1086~1129)には、漁師の魚網の廃棄さえ行われ、「秋の夕ぐれ、浦に釣するあま(海士)も絶えにき」(今鏡)という状況になったことがある。007.gif
そうした禁忌から解放されるのが江戸時代である。徳川政権によって、寺院勢力は幕府の支配下に組み入れられ、中世までの影響力を失った。こうして江戸初期に、釣りを遊芸に変える準備が整っていく。
その流れを時代と地理が後押しすることになった。
029.gifまず第一に平和の訪れである。武士には時間のゆとりが生じた。有閑階級となった武士が幕府の新体制で江戸に多く集まった。彼らの目の前には波静かで魚族に満ちた江戸湾が広がっている。
平和の訪れと豊かな湾
やがて釣りを始める武士が現れた。記録に残る最も古い遊びの釣りは、越後村上藩主の松平大和守直矩によるものだ。
大和守と家臣の一行約20人は万治2年(1659)9月23日江戸湾に数艘の舟を出してハゼを釣った。
その楽しさが「松平大和守日記」に書かれている。大和守は当時18歳。徳川家康の曾孫であった。
少し時代が下がって、享保年間(1716~36年間)になると本邦初の釣りの書物「何羨録」が書かれている。筆者は津軽采女という4000石の大旗本だ。
記録に残る最古のハゼ釣り江戸湾でのキス釣りの書物である。湾内を網羅した釣場編、釣竿用の竹の刈り方などにも触れた道具編、雲の様子や星の光などを天気予報の手段とする気象編、の三部で構成されている。
世界で最も有名な釣りの古典は、英国のアイザック・ウォルトンによる「釣魚大全」(1653年)だが、それにわずかに遅れただけで、内容的にもきわめて高度な「何羨録」が鎖国中の日本で書かれていたのだ。
この釣りの旗本の津軽采女は、忠臣蔵の適役・吉良上野助の娘婿であり、15年間にわたって釣りを禁止した将軍綱吉の側小姓であったという異色の経歴の人物なのである。
趣味の釣りが武士の間で始まったことは「何羨録」の道具編からも読み取れる。約30種類の釣針が図入りで収録されているのだが、その考案者の大半が武士なのだ。
誰もが楽しめる水の趣味に
趣味の釣りは、武士から庶民へと広がる。やがて女性の間にも広まった。釣りをする女性は浮世絵の題材となり川柳にも詠まれた。前者では歌麿の「沙魚釣舟」などが有名だし、010.gif
後者では「大胆不敵沖釣りの後家」という句まである。016.gif
隅田川の河口のハゼやクロダイをはじめとする魚たちを主人公にした
「水中魚論丘釣話」という小説まで出版されている。
それに比べて現代の日本の釣りはどうだろう。釣り人口は1000万人ともいわれるが、
そのかなりがルアーフィシングの愛好者だ。彼らの主要な対象魚はブラックバスである。015.gif
北米原産の外来魚は密放流の繰り返しで全国の湖沼に生息域を拡大し、在来魚の生存を脅かすまでになっている。今年10月には、国連の生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が名古屋市で開かれる。
地球上の多様な生物を生息環境とともに守ることが目的だ。034.gif
日本の淡水の生態系では、ブラックバスとブルーギルが問題になるだろう。
釣りは文化と共生関係を築いてきた。竿や浮きなどの道具にも工芸の香りがあった。
釣り人は多獲を目的とはしていなかった。こうした日本の釣り文化が揺らいでいる。
釣りは、環境と生物種の保全に貢献する水の趣味であるはずだ。029.gif
本来の釣りに立ち戻る手がかりは、江戸の釣りの中にある! 013.gif
 (釣魚史研究家)長辻象平「江戸の釣り」より
                                             

by ykuroaka | 2010-02-15 09:02 | その他 | Comments(0)  

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